『海炭市叙景』(熊切和嘉監督)

海炭市叙景』という映画をDVDで観た。海炭市という架空の都市を舞台に、何組かの家族の風景が描かれる。すべて、救いがない。寒い地方の冬のように、凍えるような風景ばかりだ。夢とか希望がいっさいない。でも、そこにはひとつの美しさがあると思った。
この映画は、佐藤泰志という作家の小説が原作になっている。この作家は、若くして自殺している。たしかに、見ているのがこんな世界だとしたら、死ぬのかもしれない、と思う。
ただ、私は原作を読んでいない。そして、ある映画監督が、その人の作品を映画にした。それを私が偶然みた。そしてその暗い風景の中に、ある意味の美しさを感じた。
作家でも画家でも、表現する人は、自分の世界観を、人と共有したい、共感したい、という欲望があるのだとしたら、この作品は、それに成功したんじゃないのか。と思った。
実際のところは、作家が映画をみたら、こんなの自分の世界じゃない、と思うかもしれないけども。
映画 「海炭市叙景」 公式サイト

希望が何もないと言ったけど、もしも、猫が子供を生むことや、星を見る事や、苦しみから解放される死が、何の比喩でもなく含みでもなく、ただそれだけのこと、それが希望であるのだとしたら、希望がない映画とは言えないけれども。