2012-01-01から1年間の記事一覧

【小説】あかるいみらい(5)「手紙が届く」

「手紙が届く」 母親と下馬へ出かけてから、二週間ほど経った。桜が咲き始めていた。ある日、アパートへ帰ってきてポストを開けると、桜の花びらが一枚落ちた。そして、手紙が一通届いていた。封筒の裏には、下馬の住所と、長谷川亜紀、という名前が記されて…

折り方の角度とか、羽の切り方とか、すこし紙を曲げる事によって、個性を加えられる鳥。 折り紙愉しいな。いつか自分のオリジナルの折り方を作ってみたい。

『海炭市叙景』(熊切和嘉監督)

『海炭市叙景』という映画をDVDで観た。海炭市という架空の都市を舞台に、何組かの家族の風景が描かれる。すべて、救いがない。寒い地方の冬のように、凍えるような風景ばかりだ。夢とか希望がいっさいない。でも、そこにはひとつの美しさがあると思った。 …

「今は」

今は すぐにも 過去になる かすれて 光になって 消えてしまう きっとだから

「ふみきり」

ふみきりの 前にくると 線路の果を 探してしまう死者の 気配は 切ない幻の 野原 揺れる草 蜻蛉私は ここにいない 空を飛んでる きっと

訪問看護をしている妹が、急に電話で仕事に呼び出され、いつもママにべったりの甥が、私と二人で公園にいることになった。 おかあしゃん、どこ?と言って、泣きそうになったけれど、涙はこぼさなかった。水鉄砲と水玉風船を手榴弾代わりにつかって戦争ごっこ…

【詩_20120224】

鳥の形の窓の向こうに 冷たい雨を含んだ雲が 垂れ籠める空とおくに 黒点のように 鳥が数羽舞っているねじが壊れたオルゴールの メロディーを忘れた曲が鳴っている 顔がない写真のように首吊り死体がかすかに揺れている 風景のひとつとして 誰もいない 何とも…

【詩_20120320】

孤独になりたいという 私の第六の人格バーコードと 樹木と 宇宙を映し出す目∞泣き出しそうな 青灰色の空に 不在の鳥の 鳴き声の残響黒いセロファン カミソリ 煙草の灰

【断片_20120305】

今日は、仕事で、というか働いている福祉施設の日帰り旅行の付き添いで、横浜にあるカップヌードルミュージアムへ行ってきた。そこでは、自分でカップヌードルが作れる。カップに絵を描き、スープと具を自分の好みに組み合わせることができる。私のヌードル…

【小説】あかるいみらい(4)「東京は緑が多い」

「この道かなあ。」といいながら、母親は路地を歩いていった。未来はその後に続きながら、緊張のあまりに来たことを後悔していた。母親が立ち止まり、ああ、ここだわ、と言った。古い木造の一軒家の表札を見ると、今は変わっているがかつてそうだった「木霊…

【小説】あかるいみらい(3)「青い壁のカフェ」

バスにのって、首都高の下の影になった道路を行く。人でいっぱいなのは渋谷の街の中だけで、バスですこし離れると、急に人も少なくなり、物音も小さくなる。バスの窓から見る風景は、首都高やお互いのビルの影になっているので蒼暗く、まるで水族館の様だ。…

【小説】あかるいみらい(2)「馬という字のつく町」

「馬…、何だったかしらねえ、たしか、馬という字がついていたわよ」わたしが生まれた場所ってどこだったの?と未来は祖母にきいた。未来の父母は、未来が2歳の時に離婚している。母親は未来をつれて、その家を出たのだった。 未来の母親も、祖母も、その住所…

【小説】あかるいみらい(1)「東京のクラゲ」

爪ヤスリで、爪を丸く整える。 爪切りで爪を切ると、角度がうまくコントロールできずに、バランスが崩れる。左右対称でない爪は、気にしないでおこうと思えば気にしないでいられるのだが、そこに澱のようなものが残る。雑にしていることを気にしないようにし…

【詩_20120216】

ケンケン ケン パ夜道で 裸カルピスソーダは 覚えてる気がする

【詩20120120】

水面を渡ってくる 波紋 等間隔の 永遠の 孤独

【断片20120111 自立】

自立ってなんだろう。ともかく自立しなきゃ、自立したい、と思っている。 誰かに頼るとしても、よりかかるんじゃなく…。 今はいろんなひとにかなりよりかかってるからな。 でも、よりかかると自分がなくなる感じがあり、それがいやになってきた。 でも、誰に…

【断片20120108 肉体】

運動が苦手で、避けてきたのだが、去年の半ばから、私は体はあまりつかわず頭のほうを使って、表現もしている気がして、それは偏っていると感じ、体を使いたいと思っていた。詩でもやはり、声、音の流れというのも重要な要素の筈だとだんだん思われてきた。…

【ドローイング20120108】

このごろドローイングをはじめた。手応えはまだないけど…。 これは昨日習った体操の時に感じた事だろう。なんか体がバラバラのような…。 そこから、悲しみみたいなものを線で表そうと思った。以前撮った冬枯れた林の写真を思い起こした。線は、昨日見た美学…