しょぼい

今まで絵を描いてきて、描いていても満足することはなかったが、なぜ満足できる絵が描けないのか、なぜいつもしょぼい感じなのか、よくわからなかった。どうしたらいいのかもわからなかった。

この間、先生に見てもらった、手や指に墨をつけてぺたぺたと押した絵が、筆を使って描いた絵よりも圧倒的にパワーが感じられた。手型のほうが、筆で一生懸命に描いた絵よりも、迫力があるとは。不思議なことに、それは確かなのだ。
先生に指摘されつづけて、やっと頭の硬い私に、それが心から理解できるようになったのだと思う。

筆で絵を描きたいなら、その絵は手型よりもパワーがなければ意味がないのだ。

そこまでの力量が、今の私には、あるとは思えない。

現代美術にもうとかったのだが、千葉茂夫さんの『現代美術逸脱史』や『未生の日本美術史』を読んでいると、出てくる絵はすべて、写実ではない。体や手を使って描いたような、原始美術のようなおどろおどろしいものも、現代の「日本美術」なのだな。それも見えてきたような気もする。

だが私の好みは、エルンストのように、自然と人工の混ざったものだから、手型だけではものたりなさを感じる。自分の手を加えて、手型だけよりも良いものにできるだろうか。

そこまでの力量がある、ということは、自然と同じかそれ以上の力量が自分にあるということ、自意識を捨てて自然そのものに近い状態になる、自然の霊媒のようになる、ということなのかな。